SECRET×SECRET
[5]

「……おはよ」
「……ん……」
ラグは瞼を開いたが、傍らに横たわる澄まし顔の黒猫に挨拶をされ、現状が理解出来なかった。
睫毛を瞬かせ、とろんとした瞳でノワールを見つめている。
「そんな眼で見ると、食べてしまうよ?」
目覚めたのを確認し、黒猫は早速甘えモードだ。
ベッドはダブルサイズ、男子二人を横たえても余裕がある。ラグを寝かせた後、寒がりの黒猫は決まりよく潜り込み、稚い寝顔を眺めていた。
何度か頬や額にキスをし可愛らしいラグを食べてしまおうかと思ったが、寝込みを襲う大胆さは理性が止めていた。
だがそれも、時間の問題だ。
まどろみ甘える瞳、柔らかな頬やうなじ、アルビス種特有の抜けるように白い肌、自身と同種の銀糸は細く素直な毛質をしていて、撫でつけるといつまでも触れていたくなる感触だった。
少年を愛でる趣味は持ち合わせていないが、ラグ・シーイングは別格。
ぴたりと寄り添う甘えたしぐさに、弟以上の愛着が湧いたのは隠しようがなかった。
「…ゴーシュ…にい…さん…?」
「……ん?」
「…………」
ラグはまだ、まどろんでいる。
「安眠妨害はしなかったよ?」
「……うん…」
甘える声で返事をし、ラグはノワールの胸に半身を寄せた。
「…ねむ…ぃ…」
再び瞼を閉じる。
「ラグ?」
ノワールに肩を抱かれ、とろとろの瞳を覗かせる。
「そろそろ、夕食だ。起きろ…」
「…うん…」
返事はしたものの、ベッドからは離れ難いらしく、ラグはノワールに再びすり寄った。
「……ラグ…」
ノワールにとってのメインディッシュはむしろラグ。甘える義弟と理性を天秤にかけても、勝るのはどちらか決まっている。
顎から華奢な首筋をなでつけ、流れるように髪を梳くとラグの瞼がふわりと開く。
「…くすぐったい…」
「どこ…?」
再度、うなじを撫でおろす。
「…や…」
くすぐられ、ラグはノワールの肩に顔を埋めた。
「起きろって…」
「…眠いよぉ…」
すっかりラグは夢見心地だ。幼い記憶に浸り、甘えている。
「――ラグ…?」
仰向けに寝かせ、稚い義弟の顔を覗く。
ノワールに見つめられているのもお構いなしで、蕩ける視線を交わし、ラグは可愛らしく微笑みを向けてくる。
「……も…、す…こし…」
「…………」
華のような笑顔を返され、ノワールは固唾を呑んだ。
「あまり、駄々をこねるなよ」
「……ん…」
「ぼくを困らせたいの?」
ラグは無意識に、ゆるく首を横に振った。
「……ね」
ノワールは両腕に、小さな顔をすっぽりと閉じ込める。

「――キスしていい…?」
ゆるく開く唇を眺め、堪え切れず、そっと息を潜め囁いた。
「…ゴーシュ…兄さんと…キス…?」
「ああ…」
ラグは夢の中で尋ねた。長い睫毛を落とし、甘ったるく鼻を鳴らす。
呼吸が深くなり、まどろみが夢へ回帰する。
「…キ…ス………」
寝息混じりの呟きに誘われ、唇がふわりと重ねられた。
「……ん…」
ラグの反応は素直だ。唇を開き、やわらかな舌を容易く受け入れる。
「…ぼくに合わせて…」
「…………っん…ん…」
ラグの舌を誘い出し、舌先だけを擦りつける。行為に倣い、ラグもノワールの舌をチロチロと舐めた。
「…はぁ…」
美食を頬張るように小さな舌を含められ、ラグの息が上がる。
「……ラグ…」
「……ぁ…」
唇を舌先で辿られ、か細く声が上がった。
「……ん…」
稚い敏感な咥内に、再び舌を挿し入れる。互いに絡ませる、舌のなまめかしい感触に身体が熱くなってくる。
「…はぁ、…あつ…い…」
「…うん…」
上着のジッパーをゆるゆると引き下げ、ラグの白く薄い胸が外気に晒された。
未発達の胸の飾りは淡い桜色で、視界に飛び込んだ痩身にノワールは面映く苦笑いを浮かべた。
「…ん…ぁっ…」
そこに触れられ、半身がひくっと震える。
唇を吸いながら、小さな乳首を指先で軽く引っ掻くと、ラグは息を弾ませ始めた。
「…やぁ…、く…、くすぐったい……」
か細い悲鳴にノワールは触発された。
甘ったるい声を求め首筋を舐め上げ、肉芽に弧を描くと熱にうなされた喘ぎが上がる。
「…んん…ぁ…っ…、やぁ……」
「ここ…、くすぐったい…?」
ノワールに尋ねられ、ラグはこくんと頷く。
「…こっちも…?」
「…あ…ぁ…」
もう片方を口に含められ、ラグは上体をずり上げる。
「…あ…や、…んっ…そこ、…だめ……」
舌先で幼い乳首を転がされ、華奢な脚が忙しなくシーツを掻き乱す。
「……シュ、…にい…さっ…」
「…なに…?」
「…ぁ…」
小さな飾りは稚いながらも尖りを帯び、ノワールの眼を楽しませた。
「…ふっ…まだ、こんなん、なのにな…」
平らな胸元で尖ったそこは、幼い少年のものだ。指先でつまむのも憚られるほどの未熟な乳首を、ノワールは粘膜で鍛錬に湿らせる。
「……あっ、ぁ…」
舌先で先端を転がし、赤みを増す蕾を舐め、再びきつく吸い上げる。
「はぁ、…ぁ…ぁあっ……」
ノワールは唇をずらし、散々指先で転がし尖り切った片方の乳首を舌で嬲った。
「や…!ぁ…あっ…」
湿らせた先端を摘み、柔らかく指先で捏ねまわす。両方を刺激され、幼い口からとめどなく甘い喘ぎ声が零れる。
「……はぁ…あっ…ぁ…んっ…ん…」
「もう、これで、…限界かな…」
陶酔する意識に翻弄されるラグには、発情を隠すノワールの声音は届かない。
弄ばれる半身の快感はまどろむ世界で下肢へと流れ、ノワールは頃合いを見計らい、熟れた中心を指先でやわらかく擦り上げた。
「――――…ひっ…あぁ…っ…」
未開の快感に嬌声が零れる。
「…………ぁ、……」
甘く鋭い電流が背中から下肢へと流れ、ラグはハッとし眼を見開いた。



「…やっと、起きた…?」
目を丸くするラグの言葉を遮り、ノワールは唇を塞いだ。柔らかく吸い上げ、慈愛の眼差しでラグを見つめる。
「ラグ…、可愛い…」
「…………???」
目覚めたての少年は思考を上手く廻らせない。呆然とノワールを見上げ、薄暗いベッドルームを一往する。
「☆☆☆!!」
至近距離にある黒猫の甘い面に、今更ながらラグは固まった。
「夢でも見てたの…?」
「…………」
言葉も出ず、視線を落とす。
「どんな…?」
「……シュ…にぃさん…の…」
「ぼくの…?」
「…あ、…えっと…」
ラグは恥ずかしく、ベッドに潜り込む。
「……気持良かった…?」
あくどく言われ、とたんにラグの顔は真っ赤になった。
「―――…ぁ…っ…」
ノワールの片手が下肢に触れる。ショートパンツの裾をたくし上げ、指先で脚の付根を探られる。
「…っ!」
「……ラグ」
ラグは返事が出来ないままだ。自身の身体で、何が起きたのか解らずにいる。
「可愛い、…ラグの声」
「ゴーシュ、ぼ、ぼく……」
不安げに睫毛を瞬かせ、じわりと瞳に涙が浮かぶ。
「夢の中で好きな子とエッチして…、こうなるのは…、男の子なら当然の反応だけど…?」
ラグはふるふると被りを振る。
「ラグ?」
「…だって…」
「今日だけは、ぼくを呼びたいように呼ぶんじゃないの…?」
「…き、今日だけ…」
「ああ、今日だけのサプライズだろ?――違う…?」
完全に目覚めたラグは、戸惑いを見せた。
夢の中でノワールにキスをされ、自分の身体を開き、想像したこともない淫らな声で目覚めた。胸の中が甘さを残し、切迫している。
夢ではなく現実だと、受け入れたいがあまりにも刺激が強すぎた。
「濡れてる…?」
「…あっ!」
布越しに中心を擦られ、じんわりと腰に甘さが広がる。
「…や、やだ…、ゴーシュ…」
「拭かないと…」
「え、あっ…ダメ!」
ショートパンツは剥ぎ取られ、濡れた下着が露わになる。
「初めて…?」
意地悪く言われ、ラグは死んでしまいたい気分だ。
醜態を晒す下肢を、思い焦がれた兄に見られている、それだけで身体が熱くなってくる。
「触ったことない…?」
反論し、ラグはうらめしく見返した。
「自分でしたことないの?」
「…な、なにを…?」
「さぁて、なんだろ…」
ノワールの呟きに、ますますラグは赤くなる。
熱が残り、反応を示した果実をノワールは満足気に眺め、上くちびるをひとなめし、次いで、
「――――直に触って、……いい?」
と、ラグの耳孔に熱を吹き込み囁いた。
「……っ」
艶めいた声音と言葉に腰が砕けそうだ。返事を返す間もなく、ノワールの指がそこに触れる。
「…もう、とろとろだ…」
「――…あっ…!」
直に触れられ湿った音が聞こえた。ラグは成す術もなく、不安げにノワールを見上げる。
「ゴ、ゴーシュの…、手が…」
「手が…?なに…」
「…………」
ラグは言葉を知らなかった。今にも泣き出しそうな瞳で、どうにも出来ず拗ねて見せる。
「…あったか…」
ノワールは眼を細め、満足気にくすりと笑った。
「…ぁ…っ…」
些細なノワールの態度が、ラグの自尊心を砕いてゆく。
音を立て、ぬめる粘液を下腹部に塗りつけられ、恥ずかしさでおかしくなりそうになる。
「見る?…ここ」
処置をせず、一度吐精したラグの中心をノワールは捕らえた。濡れた指先を見せつけられ、ラグは顔を背ける。
「どうして?ラグのミルクなのに…」
「…ふぁっ…」
再び下着に手を挿し入れられる。蜜を滴らせるそこを根元からゆっくりと擦り上げられ、無意識に背中が仰け反ってしまう。
「や、やっ…、ゴーシュ…」
腰から背筋にじわりと広がる未知の甘い痺れに脅え、ノワールを押しのけようとした。
「脱がせていい…?」
ノワールは下着に手を掛ける。
「…や、ダメ…」
「見るって言ったよね。……ラグの大切なとこ…」
「…やだ…あっ…!」
隙を突かれ、呆気なく下着は脱がされ、ベッドの隅に放られた。


「――――そんなに、…み、見ないで、…お願い…」
「あまり明るくないから平気だよ」
ノワールの言葉に思わずサイドランプを見上げたが、漆黒の暗室ではないのだ。
傍らの端正な面は、愛しげに、また悪戯に微笑んでいるように映り、たしかに朧な灯りだが見えない訳がない、とラグはうらめしく思った。
「――なに…?」
「……っ…」
抱き止めるノワールと眼が合い、ラグは竦み上がる。
「う、うそつき…」
「何の話…?」
「ゴーシュがどんな顔してるか…、わかるもん…」
「だから…?」
「――…ぁ…」
幼くも熱を帯び、硬度を増すそこに、ノワールの指先が触れた。
「…や、…も、…さ、触ら…ないで…」
ノワールに抗えず、ラグは首にしがみつく。
「ダメ?」
「…だ、だめ…っ…」
溢れ出る蜜を掌に掬い、何度も緩やかに擦られ、ラグの腰が揺れる。
「あっ、――やぁ……っ」
「気持ちいい…?」
ゆるゆると扱かれ、ゆるく開く先端の蜜を広げられると、性急な快感が脳天まで突き抜けた。
「…ぁ…、ぁ…、あっ!…」
「今度はもう少し、ぼくを楽しませて…」
達し掛けたラグをノワールは焦らした。
上気した痩身を軽々と抱きかかえ、くるりと反転させる。
「――――痛っ……」
背後から回された片手に、そこをきつく堰き止められた。
「痛くないよ、こうすると…、ほら…」
「な、なにするの…?」
「さぁ…?なにかな…」
ノワールは熟れ掛けた果実を、もう片方の掌で包みやわらかく擦り上げる。
先端から溢れ出る蜜を何度も掬いあげられ、指先から零れたしずくは挟間に伝ってゆく。
「あぁっ…あっ…んん…はぁ…やぁ…」
ラグは戸惑う間もなく、快楽に占拠された。
「誰にも知られたくないな、敏感なラグは…」
「……ゴ……シュ……」
「こんなに…濡れて…」
吐精後放置され、再び弄ばれているのだ。したたる粘液と蜜が入り混じり、耳に届くひどく淫らな音は自身のそこだとはっきりと分かる。
「――――…ラグ……」
度々ノワールの唇は、名を囁きながら首筋を吸い、耳朶を噛み、感触を味わい舐めあげた。吐息を挿し込まれ、そのたびに小さな唇から喘ぎが上がる。
「ぅ…ん…、…あっ、……はぁ……っ」
ラグは声を抑えようと何度も口を閉じたが、全身に伝わった快感に追われ、呼吸もままならない。何をされ自分の身体がどうなってるのか、追う余裕をすっかり失っている。
「見て…?」
ノワールに上体を抱えられ、下肢を見るよう促される。尖り、とろとろに蜜を零すそこが目に入った。
「――……!」
自分のそこの変化が信じられず、ラグは眼をきつく瞑る。
「だぁめ、男の子だろ…、見慣れとこ…?」
「…ぁあっ…やめ…っ…」
刺激の強い視覚効果が目に焼き付き、瞼を閉じても意味はなく余計に感度が増した。激しく扱かれると、ぬめりをリアルに感じ取ってしまう。
「……あっ、あっ、…あっ、…やぁぁ…んん…」
「ラグのここ、綺麗…」
言葉と同時に先端を強く擦られ、快感が背筋を突き抜ける。
「…ゆ、ゆ…るしてぇ……っ…」
耐え切れず、涙が零れた。
ノワールは宥めに頬を伝う涙を舐め、瞼にキスをする。
「可愛い……」
「はぁ、ぁっ…ご、…ごめ…っさ…い…、もう…やぁっ……」
「…可愛くて…、おかしくなりそう…」
「……ひっ…う…ぁ…」
ノワールの掠れた声は、ラグの耳に入らなかった。
「…シュ…、にぃ…、さぁ……ん…、あっ…ぁ……」
「――次はもっと……」
言葉を呑み、ノワールはラグを抱き締め、解放へと促す。
激しく上下に扱かれ、身も世もない未知の鮮烈な感覚に悶える。
押し寄せる甘美な恐怖に震え、ラグはノワールの腕に縋った。

「――――…………」
不意に、耳元でノワールの囁きが聞こえた。
「――え、……あっ、…あっ、やぁ…、ああぁっ――……!」
返事をしようにも急かされる快感に追われ、聴き取れないままにラグは一気に昇りつめた。

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