ラ:(街中で佇むラグ)
こころの不安を映した灰色の空
涙より先に伝った雨粒は、
見上げた先に運命が待ち受けると誘う(いざなう)ように、やさしく、ゆるやかに僕の首を上げさせた。
(街頭ヴィジョンにゴーシュ)
あなたはだれ――――!?
***
数か月後
(学園:ザジと待ち合わせのラグ)
ザ:おー!ラグ。
ラ:ごめんねザジ、遅くなって。
ザ:どーよ、クラスは慣れたか?
ラ:まだ顔と名前が一致しないんだ。
ザ:だろうな まぁそのうち覚えんだろうけど…。
ラ:ねぇ、話ってなに?
ザ:お前、部活はどぉすんの?
ラ:まだ決めてないけど。
ザ:じゃぁバスケ部にはいんねぇ?
ラ:へ?バスケ部?
ザ:あ~…でも“部”じゃねぇか…。
ラ:ザジはバスケ部に入ってるの?
ザ:ん~…まぁな。でも部員が少なくて俺と先輩一人しかいねぇから、今はまだ研究部なんだ。
だからロクに練習もできねぇし、俺なんてほとんど幽霊部員って感じだし。
ラ:ふ~ん←どうでもいい感じ
ザ:な?俺と同じ部活やろ~ぜ。バスケ出来なくても大丈夫だからさ。部員がいねぇし試合も出来ないから過酷じゃないし。
ラ:バスケかぁ…。
(その時ふらっと歩いてるノワールを発見)
ラ:――あ……!
ザ:ん?
ラ:あの人(あの時の――?)
ザ:ああ、スエード先輩?
ラ:スエード先輩って…。あのゴーシュ・スエード!?
ザ:この学園には芸能クラスがあってそこに在籍してる…って、おいラグ!?
(ノワールに駆け寄るラグ)
ラ:待って下さい…!
ノ:…?
ラ:ゴーシュ・スエードさんですか?
ノ:…え?
ラ:あなたを以前に街頭ビジョンで観てから、僕、あなたのファンで…///
ノ:ああ…、それは人違いだよ。僕じゃない。
ラ:間違いなくあなたです!ゴーシュ・スエードさん。
ノ:――……。
ラ:僕…去年の秋、進路に迷っていて――。
考えていたら苦しくなってしまって家を飛び出したことがあって……。
そんな時にあなたを見たんです。
街頭ビジョンの僅かな時間でした。
その時の僕にとっては名前も知らない人だったのに…、
一瞬見ただけで僕はあなたのファンになったんです。
なんていうか…、存在感があって光り輝いていて、と、とにかくすごくかっこよくて……。
ゴーシュさんを見た瞬間に悩みが消えました。
それから色々ゴーシュさんのことを知って行くうちに、あなたのいる世界に憧れて、
僕も僕を通して誰かを幸せにしてみたいって想うようになったんです。
将来僕は何かをカタチにして、色んな人達にそれを届けたいと思ってました。
そのカタチが何なのかわからなかった…。
でも、求めていたカタチ…それがあなただって気がついたんです。
だから僕は、ゴーシュさんも通うこの学園に入学を…。
ノ:勘違いしないでくれ。僕は君のいうゴーシュじゃない。
ラ:あなたはゴーシュさんだ…。
学園でファンに追いかけられるのは迷惑かもしれません。だけど……
ノ:悪いが、それは僕の兄のゴーシュ・スエード。
僕は双子の弟、ノワール。
ラ:そんな…、ゴーシュさんに会えたと思ったのに…(涙涙涙)
ノ:……(困り顔でふっと息を吐く)
ラ:…えっ…えっ…(泣)
ノ:そんなに……、ゴーシュが好きなのか?
ラ:(こくんと頷く)
ノ:僕だったら今すぐにでも君を……《慰めてあげられるけど…》(ラグに触れる)
ラ:――へ…?
ノ名前は?
ラ:ラ…ラグ・シーイング…///
ノ:……ラグ……。
(見つめ合う二人)
ザ:どあ~~~!!!ラグにさわんじゃねぇぇぇぇ!!!行くぞ!ラグ!!
ラ:あっ!でも…。
(その場から去る二人を見送るノワちゃん)
ノ:……。
(ラグに触れた指先を見つめる)
***
ザ:しっかりしろよ、ラグ
ラ:ご…ごめん…///だってゴーシュさんにそっくりだったから…。
ザ:あいつは(超マイペースな)ノワール!
俺でも見分けつくっての!
だいたいあいつに《げぇのぉじん》オーラがないだろうが!
ラ:うう…。
(違いがよくわからないラグ)
ザ:まぁいいや、ここがさっき話してたバス研部の部室。
まだ先輩も来てないだろうけど…。
ラ:こ、こんにちは~:(一応言ってみる感じ)
ザ:ちわ~っす!!
ジ:ザジ……?(ジギーさん着替え中)
ザ:ジ…ジギーさん!!///(背中みちゃった)
今日は早いッスね(汗)
ジ:ああ、ダッシュ100本を今日からやろうと思って…。――その子は?
ザ:こいつは新入部員です!!
(ごり押し。グイッと前に突き出す)
ラ:ちょっ…!ザジ…っ!
ザ:ほら、ごあいさつは?
ラ:ラ、ラグ・シーイングです…っ
入部は、ま、まだ決めてませ~ん!!
ジ:じっと見てからラグに近づいてくる
(ラグの手を取り)
ありがとう少年、これでこの灰色の密室に月明かりが照らされ、俺達は救われることだろう。
やがて訪れる夜明けは君とともに有る。
ラ:…は、はぁ…???《意味がよくわからないんだけど…》
ザ:入部手続きの用紙顧問から貰ってきまぁす♪
ラ:待ってよ、ザジ!
まだ僕は……っ
(ザジが部室の扉をあけるとスエード兄弟が立っていた)
ザ:――――…なんだよ、センパイ…(怪訝そうに)
なんか用でも?
(ノワちゃんの背後にいたゴーシュに気がつく)
へぇ今度はツインズで登場ですか…。
ラ:《――ゴーシュ・スエード!!》
ノ:ラグが僕らのことを信じてなかったから連れてきた。
ザ:ふ~ん…?『つけてきた』の間違いじゃないんスか?
で?今日は学園にゴーシュさんも居たんですね。
ノ:(ラグを指して)あの子だよ、ゴーシュ。
ザ:《ちょっ…、おい…!オレの話はスルーかよ~!-_-;》
ゴ:君がラグ・シーイング?(ラグに近づく)
ラ:はっはい///
ゴ:ぼくに憧れてこの学園に入学したとノワールから聴きました。
ありがとう、とても嬉しいですよ(にっこり*)
ラ:(かあああああとなる)
《ほ、本物だぁぁ///》
ゴ:バス研部に入るのですね?
ラ:違うんです。ただ連れてこられただけで…。
ノ:ラグが入部するなら僕も入部したい。だからゴーシュも…、
ゴ:ノワール…(あきれ顔で)
ノ:何?
ゴ:バスケに興味があるわけではないでしょう?
……(ラグが)気に入ったのですか?(耳打ち)
ノ:放っておけない感じがする。
ゴ:……放っておけない…ですか……。(ノワちゃんの言葉でラグに視線を落とす)
ラ:~~~//////(眼があって照れる←何を言われているか聞こえない)
ノ:ゴーシュもやろう?部活…。少しは学園生活充実させよう。
ゴ:ぼくには仕事が。
ザ:そうだよな。リア充するヒマなんてねぇよな。バス研部は別にあんたらがいなくても…
あっジギーさん…!?
(つかつかとスエード兄弟のもとに近づくジギーさん)
ジ:感謝する。これで五人目だ。ついにメンバーが揃った。
ゴ:五人目のメンバーって……。
ぼくもスカウトされたのですか?(ヤレヤレ)
ジ:ああ、まずは地区大会優勝を共に目指そう☆
ロ:いや~、おつかれおつかれ~♪
(割って入ってくるロイドさん)
ザ:ちーっす
ロ:おめでとう諸君。話はそこで聴かせてもらったよ。
ラ:ねぇザジ。あの人って学園長だよね…?
ザ:なんだけど、時間があるからってバス研部の顧問もやってくれてんだ。
(ラグ、「ふ~ん」な空気)
ロ:それにしても君達、――粒ぞろいだね……。
芸能人ゴーシュ・スエード、
ノワールにジギー・ペッパー、
そして可愛い少年達☆
(しげしげとみて)
き~めた!(ポン)
きみたちをアイドルグループでデビューさせちゃお☆
5人固まる《――え……?》
ロ:どうしたの?みんな、そんな顔して。
ラ:デビューって…!?ザ、ザジ何の話?
ザ:俺も初耳だよ。…ったく、何言い出すんだよ、学園長。
ゴ:おそらくラルゴ・ロイド氏が経営している芸能事務所で、ぼくたちは芸能界で仕事をさせられるんだと思うよ。(冷静)
ノ:どうして僕まで……。
ロ:ゴーシュの言うとおり、僕、芸能事務所も経営してるんだ☆
ザ&ラ:ええ~!?
ジ:悪いが興味ない話だ。
ゴ:ぼくは無理です。事務所のかけもちなんてできません。
ロ:大丈夫、大丈夫☆
知らなかった?ゴーシュの事務所はオフィスバロールの傘下なんだ。
移籍の手続きもか~んたんだよ☆
ゴ:簡単って…。
ラ:あのう…、それって…。
ロ:ん?
ラ:ゴーシュ・スエードさん…、その…僕もゴーシュさんと一緒に仕事ができるってことですか!?
ロ:もちろん、君も含めての5人だけど。
ラ:あ……《ゴーシュさんと一緒に…》
(動揺しつつも少し考えて)
僕、やります!
ザ:そんな簡単に決めていいのかよ。
ラ:うん。決めた。僕、やってみます!
一人だと迷ってしまうことも、ザジやゴーシュさんが一緒なら乗り越えられる気がするんだ。
それにたくさんの人を幸せに出来る力も無限に広がると思います。
ロ:いいこというね~♪少年☆
で、君たちはどうするの?
ザ:(ラグの言葉に照れつつ)
ラグがそこまでいうなら、仕方ねぇな…///
ラ:ザジ///
ジ:バス研部はどうするんだ。
ロ:アイドルとして活動してくれるなら、部費を倍に増やそう…!(どや顔)
ジ:決まったな。男して生まれたなら大海原に行き、水平線を眺め、世界の広さを感じ取るのも悪くない…!(どや顔)
ラ:(ジギーさんに困惑しつつ)
ノワールとゴーシュさんは…?
ゴ:(ラグの目線にしゃがむゴーシュ)
ラ:ゴーシュさん…///
ゴ:いいですか?ラグ・シーイング。大切な将来のことを、一時の単純な想いで流されてはいけません。
ましてや、簡単に返事をしてしまっては取り返しがつかなくなることもあるのですよ。
ラ:ごめんなさい…(しゅんとする)
ゴ:ですが君の決断力には、感心しました。
ぼくに憧れこの学園に入学し、多くの人々を幸せにしたいからこその決断なのでしょう?
今がそのチャンスだと理解できた、その勇気はあるようですね。
ラ:…はい…。それにあなたがいたから…///…です。
ゴ:ありがとう…(ゴーシュスマイル)
ノ:僕もラグの心に感動したんだよ。
だから、ゴーシュを連れてここに来た。
ラ:ゴーシュさん…、ノワール…。
ゴ:どのみち、学園長がぼくの事務所のさらに上の系列会社の社長なら、掌の上と同等。
ラグ・シーイングと一緒に活動してみましょう。
ラ:(一瞬驚いた後で)
お、お願いします…!
ゴ:芸能界の先輩としてラグを護る役目は、ぼくが引き受けます。
ノ:僕も引き受けよう。君たちはバスケに専念していて構わない。
ザ:何言ってんだ!?オレもラグとやるって言ってんだろ!
ジ:ありがたい…。《部費倍増な上に、バスケに専念…》
ザ:ジギーさん!真に受けないで!!
ラ:《――というワケで、僕はバロール学園に入学早々
アイドルとして活動することになりました》
■■■第一話 おしまい♪■■■